防衛費増額の目的を「自衛隊から精神論を駆逐するため」とする主張は、筆者(菅野完)の強い社会批判と、自衛隊員が直面する劣悪な労働環境という具体的な社会問題に焦点を当てたものです。
この主張は、単なる国防論ではなく、自衛隊員を「やりがい搾取」から解放し、労働者として適切な待遇を与えるべきという人道的な要求として展開されています。
1. 精神論の横行と予算構造の歪み
菅野氏は、自衛隊内で「精神論」が横行している根本的な原因は、予算構造の歪みにあると指摘しています。
- 逆ピラミッド構造:本来、組織の予算は、基盤となる人件費、生活費、教育費が最も厚いピラミッド構造であるべきです。しかし、日本の防衛費の構造は逆になっており、先端的な装備品(主にアメリカの武器)の購入にばかり予算が割かれ、人件費、生活費、教育費が圧倒的に不足しているとされています。
- 精神論の必要性:他の職場の労働よりも仕事が厳しいにもかかわらず、待遇が悪い。それにもかかわらず「やれ」と命じるためには、「国家を守るためだ」といった精神論に頼るしかない状況が生まれているのです。
2. 劣悪な待遇と「やりがい搾取」の批判
この「精神論」の横行は、具体的な自衛隊員の生活や労働環境の悪化に直結しており、筆者はこれを**「やりがい搾取」**であると厳しく批判しています。
- 具体的な劣悪な環境:
- 隊員の宿舎はバランス釜の風呂や各階共同浴室といった劣悪な環境にあり、そこで子供を育てている隊員もいると指摘されています。
- 給料が安く、例えば昔の「軍曹さん」にあたる曹候補生であっても、手取りでせめて35万円を渡すくらいの待遇が必要であるにもかかわらず、現実の給料は非常に安いとされています。
- 中には、トイレットペーパーを自腹で買う隊員がいたり、装備を自分で「中田商店」などで購入したりする事態も発生しており、労働環境の整備が不十分であることが示されています。
- 東京ディズニーランドとの比較:「国家を守るためだ」という大義名分を掲げながら、低賃金や劣悪な環境での労働を強いることは、低賃金で長時間労働を強いる東京ディズニーランドのクルーに対する**「やりがい搾取」**と同様であると断じられています。
3. 精神論駆逐のための増額要求(GDP 3%)
菅野氏は、防衛費を増額、さらにはGDP比3%まで増額することに個人的には賛成であるとしていますが、これはミサイルや戦闘機を買うためではなく、上記のような隊員の福利厚生と労働環境を徹底的に改善するためであると強調されています。
- 予算の組み換えだけでは不足:現在の状況は、予算の組み換えだけで追いつく話ではなく、圧倒的に予算が不足しているため、増額が必要であるとされています。
- 教育予算の強化:教育予算も不足しているため、防衛大学の講演などに「精神論」を主張する人物(例:武田邦彦、三浦瑠麗)が呼ばれてしまう事態が起こっており、この点も予算増額によって解消されるべきだと示唆されています。
結論として、「自衛隊から精神論を駆逐するため」の防衛費増額という目的は、国家公務員である自衛隊員の人間的な尊厳と労働条件を守るという社会的な課題を解決するための、根本的な改革要求として位置づけられています。
民主党政権で福利厚生が改善され、その後の安倍政権下で削減の傾向が見られた
1. 待遇改善の実際の担い手
資料によると、自衛隊の福利厚生の具体的な改善は、一般的に保守的な層が想像する政権とは異なり、民主党政権時代に積極的に行われたと指摘されています。
- トイレットペーパー問題の解決:自衛隊ではかつて、予算不足のためトイレットペーパーを使う長さに制限があったり、隊員がトイレットペーパーを自腹で買う状況が発生していました。
- 民主党政権下の改善:このような隊員の福利厚生の問題に対し、民主党政権の時に「せめてトイレットペーパーぐらい(自腹で買わなくても)いいようにしてあげてくれ」と予算が付けられて改善されました。
- 本多平直の努力:特に、民主党政権時代に、皆がウキウキワクワクして(首を切った)本多平直が頑張って予算をつけ、福利厚生を一生懸命やったという経緯が強調されています。
2. その後の予算の削減傾向
民主党政権下で改善された福利厚生の予算は、その後の政権によって再び削減されたり、元の状態に戻されたりする傾向があったと指摘されています。
- 安倍政権での削減・戻し:民主党政権が福利厚生を増やしたにもかかわらず、安倍政権に(時代が)戻ってから予算が削られたり、組み換えが元に戻ったりしたとされています。
- 装備の自腹購入の継続:この結果、現在でも自衛隊の隊員は、横須賀の中田商店などで自分の装備を自腹で買う状況が続いていると述べています。
3. 保守層の認識との乖離
この事実の提示は、「田舎のおっさん」など一部の保守層が抱く、政治に対する認識が現実と乖離していることを示すために使われています。
- 誤った認識:一部の保守層は「民主党がコストカットをしたから(待遇が悪化した)」「安倍政権が増やしたに違いない」という勘違いをしているとされています。
- 「口で言うこと」しか見ていない:彼らは「何を言っているか」しか見ておらず、「何を実際にやっているか」を見ていないため、このような誤解が生じていると分析されています。彼らにとって、「口で偉そうなこと」を言っていれば、「予算を削ってても安倍さんだ」と言ってくれるだろうという構造があるのです。
したがって、この話題は、防衛費増額の議論において、真に必要なのは先端装備の購入(アメリカへの忖度)ではなく、隊員個々の生活を支える**「人」への投資であり、その重要性は政権のイデオロギーを超えた具体的なデータと過去の施策の事実**によって裏付けられるべきだ、という菅野氏の主張を補強するために提示されています。
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