80年続く「戦争」:日本の高度経済成長と少子高齢化の意外なつながり - 菅野完 朝刊チェック 文字起こし
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80年続く「戦争」:日本の高度経済成長と少子高齢化の意外なつながり

菅野完

導入:現在の人口問題、その根源はどこにあるのか?

現在の日本は、深刻な人口問題に直面しています。その規模は、毎年、一つの都道府県に匹敵する約86万人もの人口が減り続けているという、驚くべきものです。私たちは「少子高齢化」という言葉を日常的に耳にしますが、この問題の本当の根源はどこにあるのでしょうか。

多くの人が経済の停滞や価値観の変化を原因として考えがちですが、実はこの問題の根は、今から約80年前に起きた「戦争」という歴史的な出来事にまで遡ることができます。本資料では、一見無関係に思える「戦争」「高度経済成長」「少子高齢化」という3つのキーワードが、どのように一本の線で結びついているのかを解き明かしていきます。

では、なぜ戦争がすべての始まりだったのでしょうか?まずは戦後直後の日本で何が起きたのかを見ていきましょう。

1. すべての始まり:戦争が生んだ「団塊の世代」という巨大な人口の波

第二次世界大戦の終結は、日本の人口構造に最初の、そして最も大きな影響を与えました。

戦争が終わり、多くの兵士が故郷へ帰還しました。しかし、彼らを待っていたのは、一面の焼け野原でした。食べるものも、仕事もなく、未来への希望を見出すことが極めて困難な状況で、他に選択肢がなかったのです。この状況は、端的に言えば「同じ布団で寝るしかなかった」という、経済的・社会的な絶望が生んだものでした。その結果、特定の時期に集中的な出産ラッシュ、いわゆるベビーブームが引き起こされたのです。

この時期(1947年~1949年)に生まれた人々が**「団塊の世代」**です。彼らは、日本の歴史上、極めて特異な巨大な人口の塊となりました。この人口の急増こそが、その後の日本の社会と経済の形を決定づける「最初の大きな波」となったのです。

そして、この巨大な人口の波は、そのまま日本の経済を大きく押し上げることになります。

2. 高度経済成長の「不都合な真実」

1950年代半ばから1970年代初頭にかけて、日本は「高度経済成長」と呼ばれる奇跡的な経済発展を遂げました。この原動力は、しばしば「日本人の勤勉さ」や「優れた技術力」によって語られます。しかし、その背景には、一般的に語られることの少ない、いくつかの「不都合な真実」が存在します。

  • 人口ボーナス 「人口が増えるからGDPが増える」という非常にシンプルな論理です。戦争が生んだ「団塊の世代」が成長し、労働市場に参入すると、彼らは巨大な**労働力(生産者)となりました。同時に、彼らは巨大な消費市場(消費者)**も形成しました。生産と消費が同時に拡大する「人口ボーナス」の状態が、経済成長の強力なエンジンとなったのです。
  • アメリカの資金援助 当時の世界は冷戦の真っ只中にあり、アメリカは共産主義の拡大を防ぐ「防波堤」として日本の経済的復興を重要視し、莫大な資金を投じました。日本の経済成長は、この国際情勢と米国の戦略的な支援に大きく依存していたのです。
  • 隣国での戦争特需 さらに、隣国で勃発した朝鮮戦争が、日本経済に大きな利益をもたらしました。日本は戦場に物資を供給する兵站基地となり、何の努力もすることなく莫大な利益を得ました。これもまた、日本の成長を後押しした外部要因の一つです。

これらの要因を考えると、高度経済成長は必ずしも日本単独の努力の結晶とは言えない側面が見えてきます。この事実を、次の一言は痛烈に要約しています。

日本人なんてセックスして他人の金で飯食うてただけです。

しかし、急激に膨らんだ人口の波は、必ず次の世代にその影響を及ぼします。

3. 「団塊ジュニア」の誕生と、断絶された未来

「団塊の世代」が親となる年齢に達した約20年後、日本は再びベビーブームを迎えます。この時期に生まれたのが**「団塊ジュニア」**と呼ばれる世代です。彼らの誕生により、日本の人口ピラミッドには再び大きな膨らみができました。

しかし、彼らが社会に出る頃、日本経済はバブル崩壊後の長い停滞期、いわゆる「失われた時代」に突入していました。親世代が享受したような安定した雇用や経済成長はそこにはなく、彼らの多くは「就職氷河期世代」として、非正規雇用などの不安定な経済状況に置かれることになります。この世代が直面した厳しい現実は、「俺ら(団塊ジュニア)にお前ら死ね、非正規で死ね言うて」という言葉に象徴されています。

親世代とは全く異なる経済的な不安定さは、結婚や子育てに対する大きな障壁となりました。その結果、「3世代目が生まれへんかった」のです。つまり、団塊ジュニア世代が十分に子供を持つことができなかったことが、現在の急激な少子化に直結する決定的な原因となったのです。

この断絶は、現在の日本社会が直面する、あまりにも大きな代償へと繋がっています。

結論:今なお続く80年前の亡霊

これまで見てきたように、現在の日本の人口問題は、一直線の因果関係で捉えることができます。

段階出来事内容
第1波第二次世界大戦終結戦後の特殊な状況が「団塊の世代」という人口の歪みを生む。
第2波高度経済成長「団塊の世代」による人口ボーナスと外部要因が経済を押し上げる。
第3波団塊ジュニアの誕生と経済停滞団塊の世代が親となり「団塊ジュニア」が生まれるが、彼らは「氷河期世代」として経済的に困窮する。
現在深刻な少子高齢化経済的に不安定だった団塊ジュニア世代が子供を持てず、人口減少が加速する。

つまり、戦争によって生まれた人口の巨大な波が、一時は高度経済成長という「恩恵」をもたらしました。しかし、その歪な人口構造という時限爆弾がもたらした繁栄は、次の世代が支払うべき「代償」の上に成り立っていたのです。経済的に見捨てられた団塊ジュニア世代が、親世代のように子供を持つことができなかったのは、歴史の必然的な帰結でした。こうして人口再生産の連鎖は断絶し、現在の深刻な少子化へと繋がったのです。

この一連の流れは、80年前の戦争がもたらした人口構造の「歪み」という亡霊に、日本社会が今なお縛られていることを示唆しています。この歴史の皮肉を、次の一言が締めくくっています。

これ80年経ってもまだ戦争やってるってことです。

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