斎藤元彦知事の主張を信じるほど「知事は愚か者である」という結論にしか至らない理由 | 菅野完 朝刊チェック 文字起こし
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斎藤元彦知事の主張を信じるほど「知事は愚か者である」という結論にしか至らない理由

2025/12/25(木)朝刊チェック:斎藤元彦の主張を信じれば信じるほど「斎藤元彦はバカである」との答えにしか辿り着けない件

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1. 序論:斎藤知事が自ら作り出した「愚者のパラドックス」

私が菅野完でございます。朝刊チェックの時間がやってまいりました。頑張っていかなあかんなぁ~言うてるところなんですけど

本日のテーマは、兵庫県の斎藤元彦知事が自ら作り出した、ある種の「パラドックス」についてです。それは、彼のこれまでの記者会見での発言を、一言一句、嘘偽りなく、善意をもって信じようとすればするほど、「この知事は極めて愚かである」という結論以外にたどり着けなくなる、という実に奇妙な論理構造です。これは私の個人的な意見や批判では一切ありません。ただただ、斎藤知事本人が語った事実を時系列に並べたときに、必然的に浮かび上がってくる肖像に他ならないのです。

このパラドックスの根幹にあるのが、斎藤知事が依拠する「知人からの情報」という不可思議な存在です。彼の説明によれば、この「知人」たちは、知事の人生を破滅させるために動いているとしか思えません。具体的に、彼の「知人」が何を教え、何を教えなかったのかを対比させてみましょう。

  • 知人が教えてくれること①: 昨年3月、渡瀬県民局長(当時)に関する内部告発文書が外部で出回っている、という情報。わざわざこれを教えに来たことで、知事は公益通報者保護法違反の疑惑に足を踏み入れることになりました。
  • 知人が教えてくれること②: つい最近、知事の公式SNSアカウントが韓国のセクシーアイドルの写真に「いいね」をしてネットで騒ぎになっている、というゴシップ情報。これを指摘され、いいねを消したことで、かえって騒ぎが大きくなりました。
  • 知人が教えてくれないこと: 今年11月10日、国会の予算委員会という公の場で、時の内閣総理大臣臨時代理・高市早苗大臣が、斎藤元彦知事を名指しで批判し、「3号通報(外部への内部告発)も体制整備義務の対象である」という、彼の政治生命を根底から揺るがしかねない極めて重要な政府の公式見解が示されたという事実。これについて彼は「公務が忙しく把握していない」と答えました。

これを素直に信じるならば、斎藤知事の周囲には、どうでもいいゴシップや、彼を罠にはめるための内部文書の噂話は親切に教えてくれる一方で、知事自身の行為の違法性が国会で断罪されるという、政治家として致命傷になりかねない最重要情報は誰一人として伝えない、そういう「悪意のある知人」しか存在しないということになります。あんたの周りの人間、それ殺しに来てるやん。

これは、斎藤さんが言うてることを並べたらそうなる、というだけの話です。私の意見は1ミリも入っていません。知人の助言に従った結果、「全部罠にはめられてんねん。」この奇怪な状況こそが、斎藤知事のガバナンスがなぜここまで機能不全に陥っているのかを解き明かす鍵となります。では、なぜ一地方の問題が、国家レベルの法解釈問題にまで発展したのか。その発端となった、ある国会議員の動きから見ていきましょう。

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2. 問題の本質を暴いた「小方林太郎議員の質問主意書」

当初、兵庫県の内部告発問題は、あくまで一地方自治体で起きた不祥事として扱われていました。しかし、この問題は、有志の会所属の衆議院議員・小方林太郎氏が国会に提出した一枚の「質問主意書」によって、普遍的な法の支配と解釈を問う、全く異なる次元へと昇華されることになります。

まず、国政がどう動いているか分かっていない人のために説明しますが、「質問主意書」と、それに対して内閣が返す「答弁書」の持つ法的な重みは、そこらの専門家の見解とは全く異なります。国会議員からの正式な質問に対し、内閣は**「閣議決定」**という、国家の最高意思決定プロセスを経て公式な回答文書を作成します。これは大臣が委員会で口を滑らせた、というレベルの話ではありません。総理大臣の署名が入った、行政府全体による統一された、法的拘束力を持つ法の解釈なのです。これより権威のある見解は存在しません。

驚くべきことに、小方議員がこの質問主意書を提出した直接の動機は、兵庫県の問題ではありませんでした。彼は福岡県北九州市選出の議員であり、衆院選では自民党の候補者を破って当選するほどの実力者です。その彼が動いた背景は、自身の選挙区である福岡県で発覚した、**「道路整備事業に関する内部告発と、それに対する県の通報者探索問題」**でした。

しかし、その構図は兵庫県の事例と瓜二つでした。

「外部に通報した人間を、組織が『犯人捜し』をして吊し上げる」

この構造が完全に一致していたため、福岡県の問題を問うたはずの質問が、図らずも斎藤知事の行為の違法性を国家レベルで断罪する結果を招いたのです。小方議員は、 partisan な攻撃ではなく、純粋な法解釈上の問題としてこれを質しました。その結果、斎藤知事の「独自解釈」という逃げ道を完全に塞ぐ、極めて強力な武器が手に入ったのです。

では、その「武器」とは具体的にどのようなものだったのか。次のセクションで、政府が示した絶対的なルールを詳しく見ていきましょう。

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3. 政府答弁が示した公益通報者保護法の「絶対的ルール」

小方議員への政府答弁書は、一見すると「詳細は消費者庁のガイドラインを見てくれ」と突き放したような内容に見えます。しかし、これこそが決定的な一撃でした。この答弁により、消費者庁が作成した**「公益通報者保護法を踏まえ た地方公共団体の通報対応に関するガイドライン」**が、地方自治体の首長が「専門家の意見では」などと独自の解釈を差し挟む余地の一切ない、法の運用における絶対的な基準であることが国家によって追認されたのです。

このガイドラインが示す、斎藤知事の行為を根底から覆す3つの核心的な法的解釈を、以下に解説します。こんなことはガイドラインを読めば書いてあるだけの話です。

3.1. 「内部通報」の定義:「どこへ」ではなく「誰が」

多くの自治体が「内部通報とは、内部の窓口への通報(1号通報)のことだ」と誤解しています。斎藤知事もこの誤解に基づき、「外部への告発は保護対象外」という論理を展開しようとしました。しかし、ガイドラインはこの解釈を明確に否定しています。

ガイドラインの正式名称は「…ガイドライン**(内部の職員等からの通報)」です。さらにその用語解説では、「内部公益通報」の定義に、行政機関(2号)やマスコミ等の外部(3号)への通報も含まれると明記されています。つまり、法律上の「内部通報」とは、通報先が「どこへ」かではなく、通報者が「内部の職員『から』か」を基準**にしているのです。

この解釈は、11月10日の国会で高市大臣が**「3号通報は体制整備義務の対象である」**と答弁したことで、完全に確定しました。マスコミへの内部告発も、法的に保護されなければならない。当たり前の話です。

3.2. 「上司への報告」も保護対象であるという事実

組織はしばしば、「正規の通報窓口を使っていない」という手続き論を盾に、通報者を保護対象から外そうとします。しかし、これもガイドラインによって明確に禁じられています。

ガイドラインの用語解説には、こうあります。

「内部公益通報とは、(中略)上司等への報告が公益通報となる場合も含む

これは、職員が不正を発見し、いわゆるホットラインではなく直属の上司に報告した場合でも、それは法的に保護されるべき「公益通報」として扱わなければならない、ということを意味します。この規定により、「正規ルートを通さなかった」という言い逃れは一切通用しません。これも読めば分かることです。

3.3. 「利益相反の原則」:近代社会におけるイロハのイ

最後に、法律論以前の、近代社会を構成する人間としての常識、いわば「イロハのイ」とも言うべき原則についてです。ガイドラインには、こう明記されています。

事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとる

これは「利益相反の排除」と呼ばれる原則です。要するに、**「通報された人間が、その通報内容を調査してはいけない」**ということです。菅野完が通りすがりの女性をレイプしたという噂が立ったとしましょう。そこで私が「その真偽は、この俺が調査する」と宣言して、一体誰がその調査結果を信用するでしょうか。感覚で分かるやろ、そんなもん。

これを兵庫県の事例に当てはめてみましょう。「斎藤元彦が通報されているのに、なんで元彦が調べてんねん」。この一言に尽きます。通報された当事者である知事自身が、調査を主導し、犯人捜しを行う。これは近代的なガバナンスでは絶対にありえない、根本的なルール違反なのです。

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4. 結論:法の支配を理解しない前近代的ガバナンスの露呈

これまで見てきたように、政府の公式見解は、公益通報者保護法の運用における絶対的なルールを明確に示しました。この光に照らすと、斎藤知事と兵庫県の対応がいかに近代的な法治国家の原則から逸脱した、中世さながらの前近代的な無法状態であったかが白日の下に晒されます。

斎藤知事の対応は、前セクションで解説した3つの原則すべてに違反しています。

  1. 外部通報の否定: 知事は「3号通報は保護対象外という見解もある」と主張しましたが、これは高市大臣の国会答弁と政府答弁書が参照するガイドラインによって、法的に完全に否定されました。
  2. 通報者探索の違法性: 外部への告発者を「犯人」として探し出し、処分しようとした一連の行為は、法が定める「体制整備義務」に違反する明確な違法行為です。
  3. 利益相反の無視: そして最も致命的なのが、通報された当事者である知事自身が調査を主導したという事実です。これは、近代ガバナンスの根幹である「利益相反の排除」を完全に無視した行為に他なりません。

この「利益相反」という概念の欠如は、知事個人に留まらず、県組織全体に蔓延する構造的な病理です。当時の兵庫県警本部長が、監督対象である業者から金品を受け取っていた問題は、この制度的腐敗を象徴しています。「利益相反って考え方が兵庫の人には難しすぎるらしいんですよ」。自分が監督する相手から利益供与を受ける。知事の暴走をチェックすべき県警のトップからしてこの有様なのですから、組織全体が近代ガバナンスの基本を理解していないのです。これは斎藤元彦という一個人の資質の問題ではなく、兵庫県という統治機構そのものの疾患です。

結論として、斎藤知事の一連の対応は、複雑な法解釈を間違えた、というレベルの話ではありません。これは**「自分が自分を裁く」という前近代的で野蛮な無法状態**そのものです。そして、冒頭で述べたパラドックスに戻ります。もし我々が、彼の「知人から聞いた」「国会は知らなかった」という弁明をすべて善意で信じるならば、彼は法の支配の基本原則を全く理解できず、悪意ある人間に踊らされ続ける、救いようのない「愚か者」であるという結論に至ります。もし彼の弁明を信じないならば、彼は法の支配を意図的に踏みにじる、前近代的な為政者であるという結論になります。どちらの道を選んでも、行き着く先は同じです。それは、近代法治国家を統治する資格のない男の姿に他なりません。繰り返しになりますが、これは私の意見ではない。彼自身の言動が構築した、動かしようのない論理的帰結なのです。

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