はじめに:なぜ今、兵庫県で「条例」が話題になっているのか?
YouTube動画2025/11/23外国勢力は日本を弱体化させようとする時、必ず決まって「右側」を操作する
みなさん、こんにちは。インターネットやSNSは私たちの生活に欠かせない便利なツールですが、同時に、顔の見えない相手を言葉で傷つける「ネットの誹謗中傷」が、とても深刻な社会問題になっています。これは誰か他人事ではなく、誰もが被害者にも、そして意図せず加害者にもなりうる問題です。
この問題に対して、兵庫県が「全国で初めて」となる、ネットの誹謗中傷に直接対抗するための新しい条例を作ろうとしました。被害者を救うための一歩のように聞こえますが、しかし、この条例案が「言論弾圧につながる」「憲法の精神に反するのではないか」と、専門家や市民から大きな批判を浴び、議論を呼んでいるのです。
この記事では、法と社会を学ぶみなさんと一緒に、この問題を深く掘り下げてみたいと思います。
- 条例案が成立すると、知事にどんな権限が与えられるのか?
- なぜ、この条例案は「危険だ」と批判されているのか?
- もっと良い解決策はないのか?
これらの疑問を、一つひとつ順を追って解き明かしていきましょう。
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1. 兵庫県の条例案、その中心的な内容とは?
まず、話題になっている兵庫県の「インターネット上の誹謗中傷対策条例案」が、具体的にどのような権限を知事に与えようとしていたのか、その最も重要なポイントを見てみましょう。
この条例案の核心は、知事に以下の2つの強力な権限を与えることにあります。
- 削除を「要請」する権限 知事が「これは人権侵害にあたる」と判断したネット上の投稿について、プロバイダー(X(旧Twitter)やInstagramなどのSNS運営会社)に対し、**「削除措置を講ずるよう要請」**することができるようになります。
- 投稿した人へ「指導・助言」する権限 もしSNS運営会社が削除要請に応じず、投稿した人が誰なのか特定できている場合、知事はその人に対して直接、**「必要な指導または助言」**を行うことができるようになります。
なぜこのような条例案が作られたのでしょうか。背景には、現在の法律の限界があります。今の仕組みでは、被害者が裁判を起こして投稿者を特定しようとしても、特に海外のプラットフォームで著しい遅延が発生しています。例えば、裁判所が情報開示を命じても、X(旧Twitter)の日本法人がそれに従わず、半年から1年も放置するケースが後を絶ちません。その結果、証拠のデータが消えてしまい犯人が見つからないなど、被害者が救済されない切実な問題があるのです。
一見すると、知事がスピーディーに対応してくれるこの条例案は、被害者を守るための良い仕組みに見えるかもしれません。しかし、なぜこれが「言論弾圧の危険がある」とまで批判されているのでしょうか。その核心に迫ります。
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2. 最大の論点:「言論弾圧」につながる3つの危険性
専門家がこの条例案を「ボロボロの条例」とまで厳しく批判するのはなぜでしょうか。それは「全国初」という実績を急ぐあまり**「大急ぎで作成」**された結果、民主主義の根幹を揺るがす重大な危険性をいくつも抱えているからです。大きく分けて3つの理由があります。
- 【危険性1】判断するのが「知事」であることの問題 そもそも、ある表現が「誹謗中傷」や「人権侵害」にあたるかどうかを最終的に判断するのは、誰の仕事でしょうか? これは公民の教科書に出てくる基本中の基本ですが、民主主義国家では、法律に基づいて公平な立場で判断を下す**「司法(裁判所)」の役割とされています。これを三権分立と言いますね。しかし、この条例案では、行政のトップである「知事」**がその判断を下すことになります。これは、行政(知事)が司法(裁判所)の役割を奪おうとするもので、民主主義の越えてはならない一線です。権力を持つ行政の長が、自分にとって都合の悪い意見を「人権侵害だ」と判断し、社会から消してしまうことが可能になりかねません。これは権力分立の原則から見て非常に危険な構造だと指摘されています。
- 【危険性2】チェック機能(第三者機関)がないこと 仮に行政が何かを判断する場合でも、その判断が独断的にならないように、外部の専門家などで構成される**「第三者委員会」**のようなチェック機関を置くのが一般的です。 ところが、この条例案にはそうしたチェック機能がありません。これは単なる設計ミスではなく、権力を知事に集中させるという意図的で危険な設計思想の表れだと批判されています。知事の判断が一方的で偏ったものになったとしても、それを食い止める仕組みが条例の中に用意されていないのです。これでは、知事の個人的な考えだけで、言論がコントロールされてしまうリスクがあります。
- 【危険性3】条例そのものが機能しない矛盾 さらに、この条例案には「そもそも役に立たないのではないか?」という構造的な欠陥も指摘されています。 斎藤元彦知事は過去に、**「捜査中の案件についてはコメントしない」**と公言しています。もし、本当に深刻で悪質な誹謗中傷事件が起きて、警察が動くような「捜査事案」になったとしましょう。その場合、この原則に従うと、判断者であるはずの知事が「コメントできません」と言って関与できなくなってしまいます。つまり、最も救済が必要な重大な事件でこそ、条例が全く機能しなくなるという大きな矛盾を抱えているのです。
このように、条例案には理念的な危険性だけでなく、実用上の問題も指摘されています。では、専門家はどのような代替案を提案しているのでしょうか。
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3. もっと良い解決策は?提案されている2つの代替案
条例案が抱える問題を乗り越え、もっと現実的で効果的に被害者を救うためには、どのような方法があるのでしょうか。専門家からは、主に2つの代替案が提案されています。
- 代替案①:被害者を「法的に」支える仕組みを作る
- 目的:弁護士費用などを心配せずに、誰もが裁判などの法的な手続きをきちんと使えるようにすること。
- 具体策:知事が言論を判断するのではなく、「ネット誹謗中傷専門のホーテラス(法律相談窓口)」裁判所に委ねることになり、三権分立の原則も守られます。
- 代替案②:今の法律の「弱点」をなくす
- 目的:犯人を特定する手続きが遅々として進まない、今の法律の**「ぬるさ」**を改善すること。
- 具体策:この「ぬるさ」とは、日本の裁判所が情報開示を命じても、海外プラットフォームがそれを無視した場合に、強制力のある罰則などが十分に機能していない、日本特有の法的な甘さのことです。この弱点を突かれ、X(旧Twitter)の日本法人のように命令を半年から1年も無視する事業者が出てきています。これに対し、命令に従わない事業者には厳しい罰則を科すなど、もっと強制力のある手段をとれるよう国に働きかけ、法律やその運用を厳しくすることが重要です。
兵庫県の条例案と、専門家が提案する代替案の違いを整理すると、以下のようになります。
| 兵庫県の条例案が目指す方向 | 専門家が提案する代替案の方向 |
| 行政(知事)が判断し、トップダウンで削除を要請する。 | 行政は被害者を支援する側に徹し、判断は司法(裁判所)に委ねる。 |
| 「言論弾圧」のリスクを抱え、憲法違反の可能性がある。 | 三権分立を守り、言論の自由を侵害するリスクを避ける。 |
| 「全国初」という実績を急ぐあまり、拙速で機能不全な制度になっている。 | 既存の法律が機能していない現実的な問題を解決し、被害者を確実に救済する。 |
これらの論点を踏まえ、最後に私たちはこの問題から何を学ぶべきかを考えてみましょう。
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まとめ:私たちが考えるべきこと
今回見てきた兵庫県の条例案は、ネット中傷という誰もが心を痛める深刻な問題に対し、「被害者を救済したい」という正しい目的を掲げていました。しかし、その解決策として選ぼうとした手段は、行政のトップが言論をコントロールしかねない、「表現の自由」という民主主義の根幹を揺るがす危険な方法だったと言えるでしょう。
本当に被害者を救うために行政がすべきことは、権力で言論をコントロールしようとすることではありません。そうではなく、誰もが公平な司法の場で正当な権利を主張できるよう、市民が法的な手続きを使いやすくするためのインフラを整えたり、今の法律がうまく機能していない不備を改善したりすることこそが、本来の役割ではないでしょうか。
この問題は、兵庫県だけのものではありません。ネット社会に生きる私たち全員が、どうすれば自由で活発な言論空間を守りながら、心ない言葉によって傷つけられる人々を確実に救うことができるのか。そのバランスをどう取るべきか、考え続けていくべき重要なテーマなのです。だからこそ、私たち市民に求められるのは、政策のうたい文句だけでなく、それを提案するリーダーの能力や誠実さをも含めて、その方法が本当に適切なのかを厳しく見極める視点です。たとえ善意の提案であっても、その中に私たちの基本的人権を脅かす危険が隠されていないか、問い続ける責任が私たちにはあります。
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