官邸の劣化と組織崩壊の構造 | 菅野完 朝刊チェック 文字起こし
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官邸の劣化と組織崩壊の構造

2025/12/26(金)朝刊チェック:政治が人を殺すとき。

私が菅野完でございます。朝刊チェックの時間がやってまいりました。頑張っていかなあかんなぁ~言うてるところなんですけど

我々は日々、北朝鮮のミサイルや中国の核といった外部の脅威を煽られる。だが、我々の生命を本当に脅かす最大の危機は、そんな分かりやすい敵ではない。それは日本国家の中枢、官邸で静かに、しかし確実に進行している「能力の劣化」と、それに伴う致命的な「プロトコル(手順・ 規約 ・議定書・外交儀礼)の崩壊」だ。本稿では、この内部からの腐食がいかにして「政治的殺人」へと直結するのか、三つの具体的なケーススタディを通して解剖していく。第一に「情報プロトコル」の崩壊、第二に「危機管理プロトコル」の麻痺、そして最後に「国家意思決定プロトコル」の汚染である。これこそが、今我々が真に直視すべき、日本の安全保障における最大の脆弱性なのだ。

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1. 保守論壇の亀裂:イデオロギーでは擁護不能な「無能」の露呈

現在の官邸周辺で起きている深刻な劣化は、もはや思想やイデオロギーの対立軸では語れない次元に達している。その象徴が、保守論壇の重鎮、八幡和郎氏による官邸批判だ。この一件は、これまで一枚岩と見られてきた「岩盤保守」層の内部でさえ、現在の官邸が抱える救いようのない「無能」を擁護しきれなくなっている事実を白日の下に晒した。これは内部崩壊の明確な兆候である。

「ゴリゴリの保守派」からの正論

まず確認しておきたい。八幡和郎とは何者か。生前の安倍晋三を「神様」と公言し、保守論壇誌『WiLL』や『Hanada』を主戦場とする、まさに「ゴリゴリの保守派」だ。普段なら「朝日新聞は潰れろ」と叫んでいるようなこの男が、今回ばかりは驚くほどまっとうな、いや「めっちゃ正論」をぶち上げたのだ。

権力から排除すべき人間

八幡氏が自身のFacebookで断罪したのは、首相補佐官がオフレコ懇談で「日本の核武装」に言及し、それが報道された一件だ。彼の批判の要点は二つ。

  • 権力適性の欠如: 八幡氏は、問題発言をした当人だけでなく、それを擁護する人間も含めて「権力に近づけてはいけない人だ」と断じた。これは政策論以前の、統治に携わる者としての資質の完全否定である。
  • オフレコ破りの正当化: 八幡氏は、今回のケースは発言内容があまりに「ぶっ飛んだ内容」だったため、報道されても仕方がないとメディアのオフレコ破りを事実上、容認した。ジャーナリズムの原則を揺るがすほどの異常事態だったと、身内が証言したに等しい。

「安倍派」内部の断絶

この「めっちゃ正論」が意味するものは何か。それは、かつて安倍政権を支えていた人間たちの間での深刻な断絶である。生前の安倍晋三を間近で支えた有能な実務家や、八幡氏のような論客たちは、安倍自身が晩年には高市早苗を見限っていたことを知っている。

にもかかわらず、高市とその取り巻きだけが「自分こそが安倍の愛弟子」という虚構に固執する。結果、まともな実務家たちは、能力の低い高市周辺から静かに距離を置き、今や批判側に回っている。八幡氏の発言は、この構造が露呈したに過ぎない。

結論として、この一件が浮き彫りにしたのは、右か左かというイデオロギーの問題ではない。それは、**思想や信条以前に、「能力の低い人間が官邸で権力を握ることへの生理的な恐怖」**であり、もはや「ちんちんでしか物事を考えられないおっさん」に国の舵取りを任せておけるか、という根源的な危機感なのである。次章では、この官邸中枢の機能不全がもたらす具体的なリスク、すなわち「情報プロトコル」の崩壊現場に迫る。

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2. 官邸メルトダウン:ミサイルより恐ろしい「内部の愚かさ」

官邸スタッフによるオフレコ発言問題は、単なる失言ではない。これは国家の安全保障を根底から揺るがす「情報プロトコル」の完全な崩壊であり、情報を適切に取り扱う能力の欠如が、いかに致命的なリスクとなるかを晒した事件だ。

「囲み取材」で「オフレコ」を語る異常性

まず、この発言がいかに常軌を逸した状況で行われたかを直視せねばならない。記者が大勢で対象者を取り囲む「囲み取材」の、あの公然たる場で「これオフレコやけど」と前置きして、国家の根幹に関わる機微なテーマを語る。この行為の異常性。「どんだけ能力低いねん」と呆れるほかない。オフレコとは、少人数での懇談といった、暗黙の信頼関係が担保された特殊な環境で初めて成立するジャーナリズム上の作法だ。その基本すら理解せず、呪文のように「オフレコ」と唱えれば秘密が守られると信じている人間が、国家の中枢で情報を扱っているのだ。

内部に巣食う最大の脅威

この「能力の低さ」がもたらす脅威の本質を、以下の警告は的確に言い表している。

「平壌から飛んでくるミサイルよりも、中国がゴビ砂漠から東京を狙っている核兵器よりも、官邸の中に『オフレコや言うたら書いてもらわないと思う人間』が仕事をしていることの方が怖い」

外部からの攻撃には、防衛システムや外交で対処のしようがある。しかし、国家の中枢にいる人間が、自らの発言すらコントロールできないのであれば、防ぎようがない。内部の愚かさによって、意図せずして外交問題を引き起こし、安全保障環境を悪化させる。これこそが、国を滅ぼす自滅のメカニズムである。

職務を理解しない「利益相反」

さらに深刻なのは、週刊文春の報道によって、この発言の主が「核軍縮担当の首相補佐官(尾上定正氏とされる)」であったと判明したことだ。自らの公式な役職が「核軍縮」であるにもかかわらず、その真逆のベクトルである「核武装」に言及する。これは、自身の立場や担うべき役割を全く理解できていない証左であり、「利益相反」的ですらある。統治能力の根本的な欠如だ。

この絶望的なまでの能力低下は、もはや政治的立場を超えた客観的事実である。普段は政権を擁護する立場の保守系・八幡和郎氏ですら、この一件には激怒し、「あんな場所での発言は報道されて当然だ」と断じている。

渋谷のスクランブル交差点の真ん中で国家機密を絶叫し、最後に小声で「あ、今のは独り言だから」とウインクするようなものだ。この行為が露呈しているのは、秘密を守る気概の欠如ではない。そもそも「秘密を守る能力も、場所をわきまえる知性もない」という致命的な愚かさである。結論はこうだ。情報の蛇口を閉める能力すらない人間が国家運営に関わっていること自体が、すでに日本にとっての有事なのである。

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3. 「政治的殺人」の解剖学:兵庫県知事が壊した生命線

国家中枢の機能不全は、地方行政にまで蔓延し、より直接的に住民の生命を脅かす凶器と化す。兵庫県の斎藤元彦知事が犯した防災マニュアルの誤認問題は、単なる事務的なミスではない。これは有事における「危機管理プロトコル」という生命線をトップ自らが破壊する行為であり、「政治が人を殺す」という事態がいかにして引き起こされるのかを解剖する、格好の事例である。

指揮系統という「安全装置」の破壊

斎藤知事は、鳥インフルエンザ対応において、本来、実務のトップである「防災監」が本部長を務めるべき対策本部の指揮系統を、自らが本部長であるかのように誤認、あるいは意図的に書き換えて認識していた。これは、危機管理において絶対に犯してはならない、致命的な過ちだ。

なぜ、この行為が「明確に人を殺しに来ている」とまで断罪されねばならないのか。それは、危機管理の成否が、ただ一点、「誰が命令し、誰が動くか」というプロトコルの厳守にかかっているからだ。災害の極限状況で、トップが正規の指揮系統を破壊すれば、現場は必ず混乱し、機能不全に陥る。それは、救えたはずの命が救えなくなる事態を意図的に作り出す行為であり、「殺人未遂」に等しい構造的な暴力なのである。

リーダーシップの歴史的誤解

真のリーダーシップとは何か。歴史がその答えを示している。日露戦争で総大将であった大山巌は、現場の戦術に一切口を出さず、大本営にどっしりと構え、指揮系統の維持に徹した。忠臣蔵で討ち入りを率いた大石内蔵助は、自ら槍を振るわず、門の中に立ち、全体の指揮に専念した。

彼らに共通するのは、現場に介入せず、システムと部下を信頼し、「任せる」ことに徹した点である。これに対し、斎藤知事の「自分がトップでないと気が済まない」「現場で目立ちたい」という態度は、リーダーシップとは真逆の、組織の目的遂行を破壊する「幼稚で下品」な自己顕示欲に過ぎない。もし大石内蔵助がこの知事のようであったなら、目立ちたがり屋のあまり現場を走り回り、記念撮影(自撮り)をして現場を混乱させ、作戦を失敗させただろう。

神戸・兵庫は、歴史的に水害や震災が頻発する日本有数の「災害多発地域」である。そのような土地のトップが、防災のイロハである指揮系統を理解していない。これは、次に必ず来るであろう大災害において、県民の命がリーダーの無理解によって失われるという、極めて現実的な恐怖を我々に突きつけている。

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4. ガルトンボードの原則:組織と社会を支配する「何もしない」力

兵庫県知事や官邸に見られる組織崩壊の病理は、個人の資質の問題を超えた、より普遍的な法則によって説明できる。それが、統計学のモデル「ガルトンボード」の原則だ。このシンプルな実験器具が示す教訓は、組織マネジメントから政治哲学までを貫く、リーダーシップの核心を我々に教えてくれる。

組織論としてのガルトンボード:「ほっとく」ことの力

ガルトンボードとは、多数の釘が打たれた盤の上から玉を落とすと、最終的に盤下に美しい「正規分布」を描き出す装置だ。これを組織マネジメントに置き換えると、驚くほど明快な結論が導き出される。

  • 「ほっとく」ことの重要性: 上から落ちてくる無数の玉(日々の業務や部下の判断)に対し、上司が人為的な介入をせず「ほっとく」ならば、組織は自然と最適解(正規分布)へと収斂していく。
  • リーダーの真の役割: では、リーダーは何もしなくて良いのか。否。その役割は、個々の玉の動きに一喜一憂することではない。リーダーが集中すべきは、ただ二点。**「ガルトンボードを置いている台が水平であるか(組織の環境は公平か)」、そして「釘が抜けていないか(システムに欠陥はないか)」**を点検し、整備することに尽きる。
  • 最悪の上司: この原則に照らせば、斎藤知事のような「わがが、わがが(俺が、俺が)」という上司の振る舞いが、いかに組織を破壊するかがわかる。彼のマイクロマネジメントは、玉の自然な落下軌道を無理やり手でねじ曲げるようなものであり、美しい正規分布の形成を妨げる「一番邪魔な」行為なのだ。

政治哲学としてのガルトンボード:「歪み」を是正する力

この原則は、社会全体のあり方、すなわち政治の役割を考える上でも極めて重要な示唆を与える。

  • 資本主義がもたらす「歪み」: 人間の能力や才能が本来「正規分布」するはずであるのに対し、現代の資本主義社会では「富」だけが一部に極端に偏在する。これは、自然な分布からの「歪み」に他ならない。
  • 「政治」の本来の役割: 本来の「政治」が果たすべき役割とは、この歪みを是正する調整作業である。すなわち、富の分布を、人間の自然な分布(正規分布)に近づけるための再分配こそが、政治の本質的な機能なのである。
  • 新自由主義への批判: この文脈から、維新の会などが推進する新自由主義的な改革は、社会の自然なバランスを破壊し、富の偏在という「歪み」をさらに助長する行為として、厳しく批判されなければならない。

優れたリーダーシップと政治の本質とは、個人の恣意的な介入を排し、システムそのものへの敬意を払うことにある。この根源的な原則を理解できない為政者が、いかに致命的な責任を負うことになるのかを、最終章で論じる。

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5. 結論:近代国家における「万死に値する罪」とは何か

官邸の情報プロトコル崩壊、地方行政の危機管理プロトコル麻痺、そして組織と社会を貫くガルトンボードの原則。これまでの議論は、我々が直面する日本の統治能力の欠如が、深刻な構造問題であることを明らかにした。それは、日本という国家が、いまだに「近代」を体得しきれていない証左である。

では、近代国家において、最も重い罪とは何か。個人の生命を奪う殺人罪だろうか。いや、違う。ここで、一つのラディカルな思考実験を提示したい。

「公文書偽造」「贈収賄」「あっせん利得」といった、国家の意思決定プロセスそのものを歪める犯罪こそを、死刑の対象にすべきである。

なぜ、これらの罪が個人の殺人よりも重い「万死に値する」のか。論理は明快だ。一人の人間が殺せる人数は限られている。しかし、国家の意思決定が、公文書の偽造や金銭の授受によって歪められたとき、誤った戦争に突入し、大災害への対応に失敗し、貧困を放置する。その結果、何万、何十万という国民の命が静かに奪われていく。国家の記録(記憶)や決定(意思)を私物化する行為は、無数の「政治的殺人」を生み出すソースコードであり、それこそが国家に対する最大の反逆であり、最も重い罪なのである。

真の政治的責任とは、派手なパフォーマンスや自己顕示欲を満たすことではない。それは、有事の際には定められたプロトコルを鉄の規律で厳守し、平時においては社会の「歪み」を是正することに静かに徹する、システムへの謙虚な姿勢に他ならない。

ガルトンボードの前に立つ為政者の、唯一にして神聖な義務は、個々の玉の動きに手を出すことではない。その「台」が水平に保たれているか、その「釘」に抜けや欠陥はないか、ただそれを点検し、維持することだけだ。現在の日本の政治に決定的に欠落しているのは、まさにこの謙虚さである。そして、その欠落こそが、ミサイルや核兵器よりも遥かに現実的で、我々の生命を脅かす最も深刻な危機なのである。

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