高市早苗内閣、支持率82%の熱狂と自民党支持率26%の冷徹な現実 - 菅野完 朝刊チェック 文字起こし
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高市早苗内閣、支持率82%の熱狂と自民党支持率26%の冷徹な現実

自由民主党
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導入部:記録的支持率の裏に潜む「危険な兆候」

2025/11/4YouTube動画の情報を基にした記事です

高市早苗内閣が発足し、内閣支持率は小泉純一郎内閣に並ぶ82%超という驚異的な数字を記録した。一見、これは自民党にとって最大の追い風に見える。しかし、その熱狂の裏で、自民党の政党支持率はわずか26%という低水準に沈んだままだ。この「内閣」への熱狂と「党」への冷ややかな視線との間に広がる巨大な乖離は、一体何を物語っているのか。

これは単なる統計上のパラドクスではない。この数字がもたらす現実的な帰結は、すでに自民党の牙城で示された。岐阜県美濃市の市長選挙で、自民党が推薦した渡辺暁典候補者が野党系候補篠田啓介氏にダブルスコアで惨敗したのだ。これは、高市内閣の記録的人気が党の勝利に全く結びつかないという「危険な兆候」であり、この支持率乖離という抽象的な問題がもたらした最初の具体的な犠牲者である。菅野氏は、この異常事態の構造を分析し、自民党の選挙戦略を根底から覆しかねない構造的欠陥を暴き出す。

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1. 広がる乖離:内閣支持率と政党支持率の現状分析

まず、現在の支持率が示す異常な状況を、具体的なデータに基づいて確認する。この数字の断絶こそが、今の自民党が直面する問題の核心である。

1.1. 驚異的な内閣支持率と低迷する政党支持率

現在の政治状況を象徴する2つの数字は、あまりに対照的だ。

  • 内閣支持率: 82%超(小泉純一郎政権に並ぶ高水準)
  • 自民党 政党支持率: 26%

この乖離は単なる統計上の差異ではない。内閣への熱狂が、その母体であるはずの政党を全く温められていないという、政治的エネルギー伝達の断絶を示している。

1.2. 地方選挙が示す警告:岐阜県美濃市長選の敗北

このエネルギー伝達の断絶が現実の選挙結果にどう現れるか。その答えを示したのが、岐阜県美濃市の市長選挙だった。ここは自民党の重鎮、衆議院議員 古屋 圭司(ふるや けいじ)の地元であり、「石を投げれば自民党員に当たる」とまで言われる保守王国である。

しかし、選挙結果は自民党にとって悪夢のようなものだった。

  • 篠田啓介 野党系候補(当選): 6,617票
  • 渡辺暁典 自民党推薦候補(落選): 3,013票

自民党推薦候補は、ダブルスコアという屈辱的な大差で敗北した。この象徴的な敗北は、いかに総理の人気が高くとも、それが自動的に党の地力を補い、選挙での勝利を保証するものではないという冷徹な現実を突きつけている。

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2. 歴史が示すパターン:内閣支持率だけでは勝てない自民党

過去の政権と比較すると、現在の状況がいかに特異で、自民党にとって危険な状態であるかがより鮮明に浮かび上がる。

2.1. 成功事例:内閣と党の支持率が連動した時代

これまで自民党が選挙で圧勝を続けてきた政権には、共通のパターンが存在した。

  • 小泉純一郎
  • 田中角栄
  • 安倍晋三

これらの首相の時代は、「国民に人気の総理総裁が誕生すれば、自民党の政党支持率も上がる」という法則が確かに機能していた。内閣と党の支持率が連動して上昇することで、自民党は安定した選挙での強さを発揮してきたのだ。

2.2. 安倍政権末期との比較

現在の状況は、2017年の安倍政権最後の衆議院選挙時と類似している点がある。当時も、自民党の政党支持率は低いままで、内閣支持率だけが上昇していた。

しかし、2021年に岸田政権下で行われた衆院選では、人気が高いとされた2017年の安倍政権時よりも、比例代表で130万票も多く獲得するという意外な結果が出ている。この歴史的データが示すのは、人気の高いリーダー(安倍氏末期)が党から遊離している状態よりも、地味なリーダー(岸田氏)であっても党が一体となっている方が選挙結果に繋がるという、高市氏にとって極めて不吉な教訓である。

2.3. 現在の異常事態

高市内閣の状況が歴史的に見て「異常」なのは、内閣支持率が記録的な高さであるにもかかわらず、政党支持率が全くそれに連動していない点だ。それどころか、自民党の支持率は、裏金事件が発覚する以前の水準にすら回復していない。これは、過去の成功パターンが完全に崩壊していることを示している。

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3. なぜ支持率は乖離するのか?:3つの推測

では、なぜ高市人気は自民党の支持に繋がらないのか。菅野氏は、この異常な乖離を説明する3つの主要な仮説が浮上している。

3.1. 推測①:支持層の「入れ替え」仮説

一つ目は、支持層の構造変化だ。高市氏の登場によって、これまで参政党や国民民主党に流れていた保守層の一部が自民党に回帰した可能性は高い。事実、これらの政党の支持率は低下傾向にある。

しかし、問題は「戻ってきた支持者の倍ほどの既存支持者が離脱しているのではないか」という点だ。もし、回帰した支持者以上に多くの有権者が自民党から離れていれば、算数的に政党支持率は上がらない。支持者の顔ぶれは変わっても、全体の数字は伸び悩むという現象が起きている可能性が指摘される。

3.2. 推測②:「高市ブランド」と「自民党ブランド」の分離

二つ目は、有権者の認識の問題である。多くの有権者が「高市早苗という個人は支持するが、自民党という組織は支持しない」という明確な使い分けをしている可能性がある。高市氏が自民党の総裁であるという事実が、支持の判断において重要視されていない、あるいは意識されていないのかもしれない。

3.3. 推測③:「大谷翔平」アナロジー(類推)

この現象を最も分かりやすく説明するのが、野球の例えだ。

「多くの国民はワールドシリーズ(WS)優勝した大谷翔平選手や山本由伸選手を知っていても、彼らの所属チームがドジャースであることを知らない、あるいは関心がない」

これと同様のことが政治の世界でも起きているのではないか。有権者は「高市早苗」というスター政治家の活躍は知っているものの、彼女が所属する「自民党」というチームには興味がない。このアナロジーは、個人の人気と組織への支持が必ずしも一致しない現代の世相を的確に捉えている。

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4. 自民党の選挙戦略と課題:「高市人気」という使えない切り札

この支持率の乖離は、自民党の選挙戦略に深刻な課題を突きつける。特に、これまで必勝戦術とされてきた「地上戦」が機能不全に陥る危険性がある。

4.1. 必勝戦術「ツーショットポスター」と地上戦の崩壊

選挙において、知名度の低い候補者の認知度を上げる常套手段が、人気の総理と地元候補者が並んだ「ツーショットポスター」だ。内閣支持率82%を誇る高市総理とのポスターは、本来であれば絶大な効果を発揮するはずである。

しかし、この戦略を支える自民党の最大の武器、「地上戦」の組織が崩壊の危機に瀕している。

  • 協力組織の不在: かつてのように、ポスター貼りを組織的に支えてきた創価学会の全面的な協力はもはや期待できない。
  • 資金の枯渇: 裏金問題の影響で、党が自由に使える資金は底をつきかけている。
  • 「ビジネスモデル」の破綻: 自民党の地方議員は、ポスター貼りの際に両面テープ代やガソリン代といった経費を要求する。これは無償のボランティアに支えられてきた野党とは異なる、自民党の「健全なビジネス関係」の文化だが、その原資が失われつつある。

つまり、自民党の伝統的な強みであった組織戦のビジネスモデルが「倒産」状態にあり、歴史的なアドバンテージであった選挙マシンが、最もそれを必要とする時に空洞化しているのだ。

4.2. 新しい支持者層と選挙運動のミスマッチ

一方で、ネットを中心に高市氏を熱心に応援する新しいタイプの支持者層も台頭している。「チェックのシャツにクロックス」というスタイルで象徴される彼らは、ネット上での声は大きいものの、従来の戸別訪問や泥臭いポスター貼りといった地道な選挙運動には不向きである可能性が高い。

4.3. 地方における深刻な課題

さらに、地方、特に山間部では「クマの出没」という物理的な危険が、ポスター貼りのような伝統的な選挙活動そのものを困難にしている。これは冗談のように聞こえるが、現場の活動家にとっては命がけの深刻な問題なのである。

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結論:視界不良の選挙戦へ

高市早苗内閣の記録的な支持率は、一見すると自民党にとって絶好の機会に映る。しかしその実態は、党が抱える構造的な弱点を覆い隠す「諸刃の剣」と断ぜざるを得ない。

歴史的な人気総裁を戴きながら、その人気を票に変える組織も、資金も、文化も失いつつある。これは視界不良などという生易しい状況ではない。自民党は、熱狂という霧の中、崖に向かって進んでいることに気づいていないのかもしれない。

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