見透かされる日本の「張子の虎」:菅野完氏が喝破する外交的無知と歴史的不誠実 | 菅野完 朝刊チェック 文字起こし
PR

見透かされる日本の「張子の虎」:菅野完氏が喝破する外交的無知と歴史的不誠実

2025/12/9(火)朝刊チェック:なぜ定数削減を喜ぶのがバカばかりなのか5秒でわかる件

序論:なぜ今、日本の外交姿勢が問われるのか

現代日本の外交は、二つの致命的な病に侵されている。国際情勢を正視できない地政学的な無知と、国民を欺き続ける歴史的な不誠実さだ。本稿は、菅野完氏の鋭い視点に基づき、この二つの病理が日本の外交政策をいかに蝕んでいるかを、近年の日中間の緊張事案を通じて徹底的に解剖するものである。

特に、中国側が応答しなかった「防衛ホットライン不通問題」や、自衛隊機への「レーダー照射事件」といった個別の事案は、単なる外交上の摩擦ではない。これらは、日本の外交的立ち位置の危うさと、その根底にある自己認識の歪みを象徴する試金石である。

本稿の目的は、単に事象を解説することに留まらない。政府の公式発表を鵜呑みにするのではなく、その裏に隠された力学や歴史的文脈を読み解くことで、日本の現状を批判的に考察するための材料を提供することにある。まずは、日本の無力さが露呈したホットライン問題から、その深層を分析していこう。

——————————————————————————–

1. 無視されたホットライン:中国の「賢明な無視」が暴く日本の無力さ

近年、日中間の緊張緩和を目的として設置された防衛ホットラインを日本側が使用しようとした際、中国側が一切応じなかった。この一件は、単なる外交上の駆け引きを超え、両国間の非対称なパワーバランスと、国際情勢に対する認識の致命的なギャップを象徴する出来事であった。

菅野氏は、中国の対応を**「中国は賢い」「それでええと思います」**と、冷徹なリアリズムに基づき全面的に肯定する。この一見逆説的な評価の根底には、日本の実力を見透かした分析がある。なぜなら、日本側には「どうせ…大したことできません」という現実があり、中国から見れば、対話に応じるまでもなく、日本には有効な対抗手段を行使する力も意志もないと判断されているからだ。中国にとって、日本はもはや真剣な交渉相手として重要視されていない。この厳しい現実が、「無視」という最も雄弁な形で示されたのである。

このパワーバランスの変化を加速させているのが、トランプ次期政権下で見込まれる米国の地政学的戦略の大転換、すなわち**「モンロー主義」への回帰**である。中国は、米国が西半球以外への不干渉へと舵を切り、「アメリカは出てこない」ことを見越した上で、より強気な外交姿勢を取っている。ホットラインの無視は、この大きな戦略的計算の一部に過ぎない。

対照的に、日本の外交姿勢は致命的な現状認識の欠如を露呈している。菅野氏が「田舎者」と断じるのは、まさにこの点だ。共和党政権を「タカ派だから日本を守ってくれる」と信じ込む倒錯した期待は、米国の国内政治力学を全く理解していないことの証左に他ならない。この日中の現状認識のギャップこそが、中国に「まともに相手にする価値なし」と判断させた最大の要因である。

この状況は、次のような比喩で要約できる。「『親分(米国)に言いつけてやるぞ!』と叫んで電話をかけてきた相手に対し、その親分がもうこの地域に関心がないことを知っているため、電話に出る労力すら無駄だと判断して着信拒否をした」

この地政学的な現実認識の欠如は、単独では存在しない。それは、自らの行動を正当化するために事実を捻じ曲げる、もう一つの深刻な病理―歴史的な不誠実さ―と固く結びついている。その典型例が、レーダー照射事件における政府の「被害者」としての自己演出である。

——————————————————————————–

2. レーダー照射事件の真相:「被害者」を演じる政府の不誠実な手口

次に、中国軍による自衛隊機へのレーダー照射事件を取り上げる。日本政府は、これを「中国による一方的な挑発行為」と位置づけ、自らを「被害者」とするナラティブを国内外に発信した。しかし菅野氏は、この公式発表に根本的な疑義を投げかける。この事件の真相を読み解くことは、政府の情報開示の信頼性を問う試金石となる。

菅野氏の視点から事件の状況を再構成すると、政府発表のナラティブからは意図的に削ぎ落とされた重要な文脈が浮かび上がってくる。

  • 現場の状況: そもそも、中国軍の空母が訓練を実施していたのは、日本の領海ではなく国際法上、全ての国が自由に航行・飛行できる**「公海」**であった。
  • 自衛隊の行動: その訓練中の空母に対し、自衛隊機は上空から監視(偵察)活動を行っていた。これは、相手から見れば潜在的な脅威となりうる軍事行動である。
  • 軍事的な常識: 菅野氏が指摘するように、公海上で訓練中の他国艦隊を上空から偵察すれば、相手が警戒し、射撃管制用のレーダーを照射(ロックオン)して牽制するのは、高価値目標を防衛するための標準的な交戦規則に則った、軍事的には**「当たり前」**の反応である。

この文脈を無視してどちらが先に手を出したかを問うことの無意味さを、菅野氏は**「どっちが行いかは言わずもがな」(どちらの振る舞いに非があるかは言うまでもない)**という一言で切り捨てる。日本政府は、自衛隊機が「公海上で訓練中の相手を覗きに行っていた」という挑発的な側面を棚に上げ、結果としての「レーダー照射」だけを切り取って被害を訴えているのだ。そしてこの不誠実なストーリーテリングは、米国がもはや「親分」として機能しないという現実から目を逸らし、国内向けに強硬姿勢をアピールするための空虚なジェスチャーに他ならない。

なぜ日本政府は、このような一方的なストーリーを構築するのか。その答えは、単なる個別の事案への対応ミスではなく、日本の国家が抱えるより根深く、歴史的な体質に求められる。

——————————————————————————–

3. 嘘の系譜:イラク戦争から盧溝橋事件まで続く国家の欺瞞

特定の外交・軍事問題における政府の説明を鵜呑みにしてはならない。菅野氏が政府発表を徹底して信用しない背景には、日本の近代史において、政府がこの種の係争で国民に「ほんまのこと(真実)」を語ったことが過去に一度もないという、痛烈な歴史認識がある。彼の政府不信の根拠は、歴史の中にこそ見出されるのだ。

菅野氏がその最大の論拠として挙げるのが、**「イラク戦争の総括」**である。この一点だけでも、日本政府の信頼性は根底から揺らぐ。

  • G7で唯一の未承認: この戦争を主導した米国自身が、後に「間違いだった」と公式に認めている。しかし、追従したG7諸国の中で、唯一日本だけが今なお戦争の過ちを認めず、総括を拒み続けている。この異常な状況は、国際社会における日本の特異な立ち位置を物語っている。
  • 論理の帰結: 菅野氏のロジックは明快だ。「戦争を始めた当事者すら間違いを認めているのに、それに追従しただけの日本が認められない」。これほど不誠実な政府が、日中間の係争において、国民に真実を語るはずがない、と結論付けるのは当然の帰結である。

この欺瞞体質は、決して最近始まったものではない。菅野氏は、歴史をさらに遡り、**「盧溝橋事件」「張作霖爆殺事件」**といった戦前の事例を挙げる。国家元首たる天皇にさえ虚偽を奏上した組織が、主権者である国民に真実を語るはずがない―これが、菅野氏の不信の根源である。

この歴史的文脈を踏まえれば、レーダー照射事件で日本政府が「中国が一方的に悪い」というナラティブを構築している現状も、「どうせ嘘だろうと思って聞いているのが正解」という菅野氏のスタンスに説得力を持たせる。

この日本の姿は、一つの滑稽で不誠実な比喩で描き出すことができる。「かつて一緒に泥棒に入った親分(米国)が『あれは犯罪だった』と反省しているのに、子分(日本)だけが『あれは正義の行いだった』と未だに言い張っている」。このような国家が語る正義を、我々は果たして信じることができるだろうか。

——————————————————————————–

結論:現実を直視せよ―幻想にすがる日本の未来

本稿で展開してきた菅野完氏の論考は、現代日本の外交が直面する二つの深刻な危機を浮き彫りにした。一つは、最大の同盟国である米国が国際社会における役割を変えようとしているにもかかわらず、その現実を認識できない**「外交的無知」。そしてもう一つは、自らの挑発的な行動や過去の過ちを隠蔽し、常に自らを被害者として描こうとする「歴史的な不誠実さ」**である。

ホットライン不通問題は、我々がもはや対等な交渉相手と見なされていないという、パワーバランスの変化を象徴していた。そしてレーダー照射事件は、自らの行動を棚に上げて相手を非難するという、歴史に根差した欺瞞の体質を露呈させた。これらは、日本の外交と安全保障政策が、もはや現実から乖離した砂上の楼閣と化していることを示している。

最終的に菅野氏の視点が我々に突きつけるのは、「現状認識の甘さが、日本の安全保障をかえって危険に晒している」という痛烈な警告である。我々はいつまで、この張子の虎を演じ続けるのか。張りぼての威信にすがり続ける先に未来はなく、国際社会の冷徹な現実がその虚飾を剥ぎ取るとき、国家は無防備に晒されるだろう。

「この記事が少しでも役に立った、面白かったと感じていただけたら、ぜひ下のバナーをポチッとクリックして応援をお願いします! いただいた1クリックが、私のブログを続ける大きな励みになります😊                                       人気ブログランキング
人気ブログランキング ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました