導入:蕎麦屋でカツ丼を頼んだことがありますか?
レストランで何かを注文したのに、まったく違う料理が運ばれてきた経験はありませんか?「カツ丼を頼んだのに、なぜかステーキが出てきた…」そんな状況は、少し滑稽に聞こえるかもしれません。
しかし、実はこれとよく似たことが、今の日本の政治で起きています。私たち有権者(国民)と政治家の関係は、驚くほど「お客さん」と「お店」の関係に似ているのです。
この資料では、「カツ丼の注文」という身近な例えを使って、私たちの投票が政治家への「注文」としてどう機能するのか、そしてその注文が無視されたとき、私たちに何ができるのかを分かりやすく解説します。政治の仕組みは複雑に思えるかもしれませんが、その本質は極めてシンプルなのです。
有権者が出した注文は蕎麦屋に電話かけてカツ丼2つって言うてんの。
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1. 選挙とは「国民からの注文」である
民主主義において、選挙は国民が政府に対して「これをやってほしい」と意思表示をする最も重要な機会です。この国民全体の集合的な意思を**民意(みんい)**と呼びます。選挙とは、いわば国民が政治家という「お店」に対して、一斉に「注文」を入れる行為なのです。
最近行われた衆議院選挙と参議院選挙は、まさに国民が明確なメッセージを送った瞬間でした。選挙結果は、有権者が当時の与党である自民党に対して「NO」を突きつけ、現状の政治に対する強い不満を示した「注文」だったと言えます。
キーポイント: あなたの一票は、単なる投票ではありません。それは、政治家に対する「これを実現してほしい」という、明確な注文なのです。
では、この選挙で国民が具体的に注文した「料理」とは、一体何だったのでしょうか。
2. 今回の注文は「カツ丼」一択だった
今回の選挙で、有権者が最も強く求めたもの、いわばメニューの中で一択だった「カツ丼」。それは、政治資金改革でした。
政治家の「裏金問題」が大きな争点となり、国民の政治不信はピークに達していました。だからこそ、有権者の注文は明確でした。炊きたてのご飯の上に、揚げたてのカツを乗せ、特製の出汁でといた卵をまとわせ、三つ葉を添えた、あの熱々の「カツ丼」です。まずはこの問題にけじめをつけ、信頼を回復してほしい。その一点を強く求めて投票に臨んだのです。
国民の注文書
問題点 (Problem) | 注文内容 (Order) |
政治家の裏金問題に対する、国民の強い不信感 | 信頼回復のための、具体的な政治資金改革 |
これは数ある要望の一つではありませんでした。この問題こそが選挙結果を決定づけた、たった一つの根本原因だったのです。
出た選挙結果の原因何なんですか言うたら裏金ですってみんな言うでしょうよ。
これほど明確な「カツ丼」の注文が入った後、政治という「お店」は一体どう対応したのでしょうか。
3. しかし、運ばれてきたのは「カツ丼」ではなかった
残念ながら、国民の明確な注文に対し、政治家たちが運んできたのは「カツ丼」ではありませんでした。彼らは次々と、まったく別の料理を提供し始めたのです。これは、政治家が国民の最優先の要求から目をそらし、別の政策ばかりを語る姿を的確に表しています。
まず運ばれてきたのは、「但馬牛のフィレ肉 シャンピニオンソース 地中海の風を添えて」。あまりにも場違いな高級ステーキです。国民が求めているのはまず信頼回復という基本的な一品なのに、それとは全く関係のない、聞こえは良いかもしれない別の政策をアピールし、論点をずらそうとする姿勢そのものです。
次に店員は、さも親切そうにこう言いました。「お客さんの体のこと考えたらほんまはね、あのけんちんそばが1番ええと思います」。これは、国民の注文を無視し、「あなたたちが本当に必要としているのは、私たちが考えるこちらの政策ですよ」と、上から目線で別の選択肢を押し付ける政治の傲慢さを象徴しています。他にも「たぬきそば」や「カレーそば」といったメニューが次々と提示されましたが、それらも全て、本質的な問題(カツ丼)から注意をそらすための「代わりの料理」に過ぎませんでした。
この食い違いが示すのは、政治家が国民の声を正しく聞けていない、あるいは意図的に聞いていないという、民主主義における根本的な断絶です。
4. なぜ、蕎麦屋はカツ丼を作れないのか?
問題は単なる「注文間違い」ではありません。この例えが示唆するさらに深刻な問題は、その「蕎麦屋」(=自民党)が、そもそもカツ丼を作る能力や意思がないのではないかという点です。
なぜそう言えるのか。その証拠は、自民党自身の総裁選挙(リーダー選び)ではっきりと示されました。以前、石破氏が党のリーダーだった際、野党との妥協案も視野に入れて政治資金改革を進めようとした結果、彼は党内の強い抵抗に遭い、事実上その座を追われることになりました。つまり、「カツ丼を作ろう」と少しでも動いたリーダーが罰せられたのです。この一件が、党の構造的な問題を浮き彫りにしました。
自民党という蕎麦屋さんの大将が何回代わろうとカツ丼は出てこないというこ とは明らかなんだから。
これは「お客さん」である国民にとって、最も苛立たしい状況です。
民主主義の危機: もし、国民がはっきりと「カツ丼が食べたい」と注文したのに、その店が「うちはカツ丼は作れません」と答えたら、その店の存在意義が問われます。これこそが、今の政治が抱える深刻な問題なのです。
では、どうしてもカツ丼が食べたい私たちは、どうすれば良いのでしょうか。答えは非常にシンプルです。
5. カツ丼が食べたければ、店を変えればいい
この例えが示す、そして民主主義が私たちに与えている最も強力な解決策。それは、もし一軒の店が注文に応えてくれないのなら、別の店に行けばいい、ということです。
これは、私たち有権者が持つ最大の力です。もし現在の与党が民意に応えないのであれば、次の選挙で「カツ丼を出してくれる」と約束し、実行できる他の政党を選ぶことができます。
事実、国民の注文は決して実現不可能なものではありません。国会中継された党首討論で、野田氏(立憲民主党)と当時の石破氏(自民党)が議論したように、すでに他の政党(国民民主党、公明党、立憲民主党)は、政治資金改革という「カツ丼のレシピ」(実現可能な改革案)を共同で作り上げています。これは、注文に応える準備ができている店が他にあることの証明です。
まとめ:私たちの「注文」を届けるために
この「カツ丼の例え」から学べる、政治と民意のシンプルな関係をまとめます。
- 選挙は「注文」である あなたの投票は、政治への具体的なリクエストです。
- 民意は尊重されるべきである 国民が何を求めているか(今回の場合は「カツ丼」=政治資金改革)を、政治は最優先で実現すべきです。
- 選択肢は常にある もし今の政治が注文に応えないなら、次の選挙で「カツ丼を出してくれる店」を選ぶ権利が、私たちにはあります。
政治は複雑に見えるかもしれませんが、その根幹にある原理は単純です。主役は私たち国民であり、私たちの「注文」こそが最も尊重されるべきなのです。
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